ちっかん・バックナンバー2001/08

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2001/8/1
ちっかん

ああ!偉大なる漢字!!

皆さま,ごきげんよう。水曜日担当ちっかんです。 本日はちょっとアカデミック(?)な考察をしてみようと思います。

今年のお正月,思い立って友人とたけまるさんと一緒に映画を見に行きました。 タイトルは「ビリー・エリオット」。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。 いい映画でしたよね。ちなみに私はこの映画を,計5回見ました。 感動のあまり,自腹を切って見ること3回。残りの2回は,日本に帰ったときの 往復の飛行機の中で上演されていたからです。

少々こちらの映画事情を説明いたしますと,入場料は概ねお安いです。 学生ですと大抵30Frs,日本円ですと500円程度で1本見ることが出来ます。 2本立てっていうのはあんまりみかけませんね。この安さですから,自腹を切って 同じ映画を3回見に行くっていうことも,簡単にできるんですよね。

そして日本では外国映画は字幕,というのが通常でしょうが,こちらでは その逆で,外国映画は吹き替えというのが主流です。映画情報欄に 何の表記もなければ,それは吹き替え。「VO」というのがありましたら それは「version originale」と言うことで,字幕で見ることになります。

私はこのビリー・エリオットを,1, 2回目はVOで,3回目は字幕,4, 5回目は日本語 吹き替えで見ました。各回の感想を述べますと

1回目(吹替): 吹きすさぶ感動の嵐。ちっかん泣きまくり。
2回目(吹替): 前回の感動衰えず。でも泣く場面は厳選してみた。
3回目(VO): ふぅ。字幕読むのって大変。英語聞き取り能力も衰えてるし。 なんかお客さんの反応も鈍い感じ。
4回目(日本語吹替):日本語によるストーリー確認。 私のフランス語聞き取り能力も捨てたもんじゃなかったのね。
5回目(日本語吹替): 途中から寝に入る。

とまあ,こんな感じです。

んで,何が言いたいのかと申しますと,3回目の「お客さんの反応」に注目して下さい。 私は最初,他の回と比べると,見に来ている人たちが感動屋さんじゃないんだろう と思いました。1, 2回目は途中で拍手が入ったり,みんなで笑う場所も多かったですし, 泣いてる人もいたくらいですからね。でも多分そうじゃないでしょう。これは絶対! 字幕のせいだと気付いたのです。

私はアルファベット語圏の人間では無いので,確かではないですけど, 日本語の字幕に比べ,フランス語,あるいは英語等々の字幕は, ある程度きちんと「読む」作業を強いられると思うんですよね。それは 我々のような外国人にとってだけではなく,こちらの人々にとっても,それほど 大差はないんじゃないかと思うんですよ。そうなると自ずと,字を追う作業に 忙殺される瞬間が生まれてきて,映画の世界そのものからは,逆に抜け出して しまうことが増えるのじゃないか。そうすると笑うポイントを逃してしまったり することも,これまた増えるのじゃないかな〜と思ったのでした。どうでしょ?

これが反対に日本語字幕ですと,漢字の持つ表意的,絵画的な側面が とっても活きてきますよね。「読む」というよりは,「見る」ことである程度 そこに表現されていることを,瞬時に理解できるわけですから,映画自体の流れに 逆らうことなくストーリーを追っていけると。
う〜ん!漢字って便利!!

もちろんアルファベットの利点もたくさんあると思います。文書を作成するときに, それほど文面の構成をしなくっても,美しく見えるとか,なにより2000に及ぶ (常用漢字ですけど)記号を覚える必要がない等々。
ひとまず今回は,外国で改めて気付いた漢字の便利さを挙げてみました。
ご意見ご感想お待ちしてます。

2001/8/8
ちっかん

夏の風物詩・その参

みなさま,こんにちは。ちっかんです。 朝夕に,既に秋の気配すら感じさせる今日この頃ではありますが, 「夏の風物詩」,しつこくいってみようと思います。 本日のお題は「バカンス中の諸事情」(さくらこさんも触れてますが)。

こちらフランスでは,大学などは5月末で,小中高は6月末で 夏休みが始まるようで,それに伴い国を挙げて,夏の大バカンスに 突入する模様です。ここグルノーブルからも,一人また一人と人が 消えていきました。みんなどこに行っちゃうの?と言うくらい特に人が いなくなるのが,やはりこの8月のようですね。街を見渡しても 旅行中の外国人,もしくは他県のフランス人,そして留学生と アラブ人軍団しか,残っていないように見受けられます。 (ちっかんもその一人・・・)

そんな民族大移動に備えて,街もバカンス仕様になるようです。 バス・トラムもぐっと本数が減って,バカンス用の時刻表になりますし, 大学の図書館も夏の間は閉鎖するか,午後だけ開放なんてことになってます。 その辺のお店にいたっては,3週間お休みします(!)という張り紙を 出しているところもざらですし,フランス国民の主食を一手に担う パン屋さんですら,営業時間短縮告知の張り紙をでかでかと 張り出しています。

そして私が「公務員のクセになぜ?!」と思った郵便局の営業時間短縮。 日本ではちょっと想像できませんね。もちろん大きな郵便局は通常通りに やってるんですよ。でもちょっと小さな支店になると,朝8時から午後2時までとか, あるいは朝8時から働いて,お昼12時から1時まで閉めて, そして更に3時で終了とか。一体このあと君ら何すんの?と叫びたくなることしか り。 更に最近友人に聞いた話だと,フランスのとある小さな村では,そこにある たった一件の郵便局でさえ,バカンス中につきってことで,3週間ほど時間短縮 じゃなくて,休業しちゃうんだそうですよ!休業ですよ!

そりゃ,グルノーブルですらグンと人がいなくなるわけですから,その小さな村なんて 一時的にものすごい過疎化するんでしょうね。効率悪いからこの期間だけ 郵便局閉めちゃえ,というココロもわからなくはない。ですが決して全員がいなく なるわけじゃないんでしょうから,その残った人たちって,一体どうやって 郵便物へのアツイ思いを押さえてるんでしょうかね。少なくともその3週間は, ポストを開けたら,いやん私宛の手紙が,っていう喜びを奪われるわけです。 それになにより郵便を出せないわけですから,もし郵便物投函の衝動に駆られた 場合は,隣町まで何十キロって車を飛ばすわけでしょうか。じゃあ私みたいに 免許を持っていない人間は,ひょっとしてこの暑い中,チャリ?それはいやだ。

何事に対してもモンクの多いフランス人ですけど,こういう不便さに対して 不平不満を抱いて,得意のマニフェスタシオンはしないんでしょうかね。
待っても待ってもトラムは来ないし,郵便局行っても閉まってるし, どこに行ってもクーラーはないしで,一気に里ゴコロのつく8月のグルノーブルでし た。

2001/8/15
ちっかん

Assomption

みなさま,こんにちは。水曜日のちっかんです (本日のコラムはNHKアナウンサー風にお読み下さい:笑)。 本日,8月15日は,こちらフランスではAssomption,聖母マリア被昇天の祝日です。 この15日前後から,8月を中心にバカンスを取る人々が大挙して出かけるようでも ありますが,カトリックでは大切な祝日でもあるのです。

フランスでも盛大なミサが催されたり,花火があげられたりしますが, フランスよりも熱心なカトリック国であるイタリアでは,教会によるミサなどの 他に,一般の人々によっても祝われるそうです(宗教色は薄そうですが・・・)。 フランスよりもイタリアの方に,聖母に関する行事は浸透しているようですね。

聖母マリアの臨終に際し,夜明けを待って聖母の魂は肉体を離れ,大勢の天使と 聖人達を伴ったキリストの腕に抱かれて天に昇っていきます。そしてその三日後, 使徒達が埋葬された聖母の墓を囲んでいたとき,聖母の魂が大天使ミカエルと キリストと共に天から下ってきて,体に戻ります。そして聖母の魂と体は再び, 輝く光と歌声に包まれて,天使達によって天に運ばれていきます。

とまあ,これが聖母被昇天のおおまかな物語です。このシーンは古来多くの 芸術家達にインスピレイションを与えてきたようで,音楽・絵画の主題として 取り上げられています。グレゴリア聖歌の一節,ヴィヴァルディの弦楽協奏曲, 絵画で挙げますと,若々しい聖母が大勢の天使と光に包まれて昇天する様子を 描いたプーサン,ティツィアーノ,と枚挙に暇がありません。

対しまして,日本ではちょうどお盆の時期に重なり,昇天とは反対に ご先祖様が,それこそバカンスよろしく大挙して帰ってくる行事ですね。 正しくは盂蘭盆会(うらぼんえ)と言って,「盂蘭」は,地獄で逆さまに ぶら下げられる苦しみを解くことを意味する梵語(サンスクリット語)の音訳だそうです。 説明するまでもありませんが,なすの馬(牛でした?)を作ったりして お仏壇を飾り,お寺さんを読んでお経をあげてもらい,お墓参りに行く などして先祖の霊を慰める期間です。

たけまるさんが,この話をイタリア人の友人に話しましたところ, 「死んだ人が帰ってくるなんて,キモチワルイ」と言われてしまったそうです。 精神的な習慣の中に,輪廻転生の考え方を持っている我々と, 一度死んでしまったなら,後は最後の審判の日まで神の国(天国)あるいは地獄に いることになるこちらの人々。西洋と東洋との違いは,こんなところにも 深く根付いているようです。


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編集長:山田たけまる takemaru@free.fr




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