2002/1/14
たけまる
大学教師
タイトルをずっと「フランスの高等教育」で番号を付けてきましたが,
何に関して書いているかわかりにくいので,今回からは内容をもう少し
示すタイトルにします。でも,路線は同じです。
今日は,フランスの大学教師について紹介したいと思います。
日本だと,基本的に大学院を出た研究者が大学教師になり,
助手・講師・助教授・教授の種類があり年功序列的に昇級したりしますが,
フランスではどうなのでしょう?
ここで紹介するのは,基本的に肩書きが大学に所属している先生,
つまり給料を大学からもらっている先生です。
DEA以上になってくると大学に
所属していない先生が授業したり,
論文の担当教官になったりもしますが,それらの教師はここでは除いておきます。
基本的には次のような種類の先生がいます。
Professeur agrege
これはpragと呼ばれます。以前のコラムでも少しでてきましたが,
agregeとは高校教師になるための資格で,大変難しい競争試験があります。
この資格で大学で教えられるのです(特に,DEUG)。
この教師になるためには,博士号を取る必要はありません。
友人曰く,この教師になるためには,だいたいagrege + DEA + コネ
が必要らしいです。
日本との対応で見れば,教養課程と専門課程が明確に別れている大学の
教養課程の先生にあたるのではないでしょうか?日本では
基本的に,研究者でなければ教養課程の先生にもなれないでしょうけど,
フランスでは必ずしも研究者でなくてもいいのです。
高校と大学との垣根が低いことが見て取れます。
日本だと,大学生と高校生では学問的におおきな違いがあるような
感覚にとらわれますが,実際は高校3年と大学1年ではそんなに
変わるはずありませんよね。垣根が低いのはいいことでしょう。
Doctorant
これは以前にもコラムででてきた,博士論文準備中(博士後期課程)の大学院生です。
フランスでは大学で大学院生が教えることが頻繁にあります。
主にTDと呼ばれる演習授業ですが,たまに,普通の講義でも教えている
ことがあるそうです。驚きです。
日本でもチューター等,ちょー低賃金で学生の面倒を見ることはありますが,
主に補助であって,授業を教えることはないですよね(少なくとも私は見たことない)。
フランスでは教えちゃうのです。
ある意味,大学院生が授業をしてしまうのは「ええんか」って気もしますが,
それである程度の経済支援をしている面ではいいかとも思います
(時給は200Frsちょいくらいだったと思う)。
ATER
これは正確には,assistant temporaire d'enseignement et de recherche(直訳すれば,
教育・研究非常勤助手)だったと思います。
これは2年程度(確かではない)の期限付きの助手です。
博士後期課程の3年目からすることができます。
まあ,日本の期限付き助手とほとんど同じでしょう。
ATERをやっている知り合いから聞いたところ,ATERになれば
次にでてくるMaitre de confeになり易いそうです。
Maitre de conference
これはconferenceの先生(maitre)だから,日本で言う「講師」かなと思われるかも
しれませんが,助教授に相当します。英語には,associate professorと訳されます。
大学の先生の肩書きを見るとこのmaitre de confeの先生がやたらと多い。
若い先生から年寄りまでみんなです。知り合いでは,もう定年退職前で
この助教授のひともいれば,博士論文がおわってそのままこの助教授に
なったひともいます。条件として年齢は関係なく,
博士論文をもっていれば応募できるようです。
しかし,よく重要視されるのは,教育経験だそうです。そのため,ATERなどで
大学で教えているとなり易いようです。
Professeur
そして,これはまさに教授ですが,助教授に比べやたらと人数が少ないです。
それだけポストが少ないのでしょう。この教授になる条件には,Habilitationという
博士論文指導資格が必要となるようです。これは博士論文の指導教官になる
ことができるための資格で,博士論文のときと同様,論文を書き
審査会を通過しないといけません。意外ともっているひとが少なかったりも
します。書くひとは,博士論文修了後,10年程度で書くようです。
これがあるから,教授が少ないのでしょうか?
フランスの大学教師はこのようになっています。
研究者からなる常勤職は助教授と教授のふたつしかないのです。また,
大きな特徴は,感覚的に高校と大学のギャップを埋めているpragの存在ですね。
因みに,高校教師からなるpragは,教養課程の教師のようですが,
pragをやりながら博士論文を書くひとが多く,その後,大学の別のポストに
つくことは多々あるようです。
いかがでしょう?フランスの大学教師の種類がだいたいわかってもらえたでしょうか?
大学に登録している方は,まわりの先生方を見てみると面白いのではないでしょうか?
でも,偏見はいけませんよ。